9月5日閉幕の東京パラリンピックは、世界の人々の心に大きな感動を残してくれています。国際パラリンピック委員会は、①マイナスの感情に向き合い、乗り越えようとする精神力、②難しいことがあっても諦めず限界を突破しようとする力、③人の心を揺さぶり駆り立てる力、④多様性を認め、工夫をすればだれもが同じスタートラインに立てることに気付かせる力、の四つの価値を重視し、パラリンピアンたちに秘められた力こそがパラリンピックの象徴であると評価しています。スポーツを通じて、障がいのある人にとってよりよい共生社会の実現を目指しているのです。
日本の司教団は教皇フランシスコの訪日に応えて、毎年9月1日から10月4日までを「すべてのいのちを守るための月間」と定めました。すべてのいのちを守るためには、ライフスタイルと日々の行動の改革が重要であることは言うまでもありませんが、心を新たにしてすべてのいのちを守るという意識と自覚を深め、地域社会の人々、特に若者たちと共に、それを具体的な行動に移す努力をしていくことが必要です。
2019年11月25日の東京ドームでのごミサの説教の中で教皇フランシスコは、「日本は、経済的には高度に発展した社会ですが、社会的に孤立している人が少なくないこと、いのちの意味が分からず、自分の存在の意味を見出せず、社会の隅にいる人が決して少なくないこと、利益と効率を追い求める過剰な競争によって多くの人の平和と安定が奪われること」を指摘しました。そして、「キリスト者の共同体として、私たちは、すべてのいのちを守り、知恵と勇気をもってあかしするよう招かれています。感謝、思いやり、寛大さ、ただ聞くこと、それらを特徴とする姿勢を、いのちをそのままに抱きしめ受け入れる姿勢を、あかしするように」と呼びかけました。
今年も新型コロナウイルス禍のため、社会活動が制限される中で、経済的にも精神的にも困窮している人が多くいます。8月の平和旬間のテーマ「誰も置き去りにしない世界」を目指していきましょう。教皇フランシスコが強調しているように、まず個人にも共同体にも「エコロジカルな回心」が必要です。
9月には、「被造物を大切にする世界祈願日」、「世界難民移住移動者の日」、そして日本の祝日である「敬老の日」もあります。みなが心を合わせて「すべてのいのち、特に危機に瀕している弱く小さないのちが保護され、人間としての尊厳が守られる社会の実現が叶うように」と祈りながら具体的な行動に移す努力をしていきましょう。